「環の相談はどうせ泣き言だけだろ。男にフラれて悔しいと思うなら、メイクのやり方考え直せ!それからプチ整形するのは瞼だけにしとけよ!」

「プチ整形って何よ!私は整形なんてどこも……洸大…っ!」


ちゃんと聞いて~!と訴える相手に、俺は聞いてられっか…と捨てゼリフを吐いて走り出した。

バーを出てコインパーキングに停めたシトロエンに乗り込み、直ぐに葵に電話を入れたが……。


「…くそっ!やっぱり出ない」


なんで…と思いつつも、さっきの環の話を聞いた限りでは、当然そうなるのも無理ない気もしてきて。


「とにかく早く誤解を解かないと」


俺が中学時代に環と付き合ってたなんて誤解もいいところだ。
それに、だからって、どうして今も付き合ってる…になる?


(俺が付き合ってんのは葵だろ?)


付き合ってるつもりじゃなかったのかよ…と声を漏らしてハンドルを握る。

ひょっとしたら、環よりも遥かに葵の方がメンドくさい相手かも…と思いつつ、彼女の部屋に向いてシトロエンを走らせた。