これでも自分は『ドン』と呼ばれてた女子だよぉーと笑い、見くびらないでよね〜とグラスを呷りながら喋る環は、俺の内緒事も知ってるんだぁ〜とウインクした。


「洸大、卒業式の日にさぁ…」

「やめろ!それ以上喋るな!」


顔の温度を上げながら制すると、環は口角を上げて笑い出した。


「可っ愛いなぁ〜、照れちゃって!」


あの冷静で『執事』と呼ばれてた男子とは思えない…と爆笑する環を睨み、それで、彼女と会ってどうしたんだ?と訊き直す。


「そうそう。彼女ね、何か用事があって病院に来てたみたいなのよ。でも、話してたらバスの時間が来たとかで帰っちゃってさ」

「えっ!?」

「それでね、一つ面白いこと聞いたんだけど…」


聞いて聞いてー、と笑いながら話す環をウザい…と思いつつも耳を傾け、聞き終わった俺は、ガタンと椅子から降りて立ち上がった。



「帰る」

「何よそれ」


私まだ相談事してない!と訴える相手に目を向け、「急用なんだ!」と叫んだ。