「美麗」

食器の片づけを終えると、それを待っていたかのようにソファでくつろぐ臣が、おいでおいでと手招きする。

まるで自分の家かのような振る舞いの臣にちょっと呆れながらも、なに?と近づいた。

「肩揉んで」
「はぁ? どんだけ人使い荒いのよ」
「今日はずっとデスクワークで疲れたの」

私だって毎日デスクワークだし。と思いつつ、結局臣の言うことを聞いてしまう。

昔からそうだ。臣の言うことに逆らえない。宿題見せてから始まり、かくまってほしいとか、お菓子半分くれだとか。

甘い声でねだられて、いつもなんだかんだ言うことを聞いしまう。惚れた弱みというやつだと心の中で嘆きながら、首を下に傾けじっと待つ臣の広い肩にそっと手をかけた。

臣の暖かな体温に触れるのは、もしかすると子供の時以来かもしれない。そう意識すると、胸が急速に高鳴り始めた。

「お、うまいじゃん美麗。あーそこそこ。もっと強くやって」

褒められるのは単純に嬉しくて、ドキドキしながら仰せのままに力を込める。臣はうーとか、あーとか、気持ちよさげに唸っている。