私もあの子みたいに若くて可愛くて、愛嬌があったらなにか違ったのかな。思いも伝えられたかな。

なんて想像してみるも、どこをどう切り取っても私とは似ても似つかない人種。

クラスでいうとあの子はマウンティングの頂上で、私は底辺。

「きゃっ」

上の空で歩いていたのものだから、段差もないのに足がもつれこけそうになった。その拍子で持っていたファイルが落ち、中身が飛び出した。

その音に二人がこっちを振り返り見ていて、焦った私は大急ぎで身を屈め書類を集めた。
しかも女の子のほうはクスクスと笑ってる。恥ずかしい……。

って、そんな悠長なこと言ってる場合じゃなかった。早くかき集めなければ。この書類には個人情報がびっしり書いてある。他人に漏れるようなことがあってはいけないと、私は床に散らばるそれを必死にかき集めた。

「はい、白鳥さん」

そこに予想だにしなかった声が聞こえてきて、慌てて顔を上げる。そこには柔らかく微笑む臣の顔があった。

もしかして、打ち合わせ中なのにわざわざ来てくれたの? 

「あ……ありがとうございます」
「全部揃ってる?」

そう言われ枚数を確認する。するとあと一枚見当たらないことに気が付いた。