あー最悪だ。戻ったらまた何か言われそう。ため息しか出ない。

経理部はどういうわけか曲者ばかり。課長もいるのかいないのかわからないくらい存在感の薄い人だし、三井さんは仕事しないし、後輩の女の子は病弱アピールがすごいし。極めつけに私ときたものだから、他の部署からは変人の集まりだと言われているのを知っている。

「やだぁ！ 都倉さんったらおもしろーい」

エレベーターホールへ続くフロアを足早に歩いていると、ドキリとするフレーズに遭遇してしましい、自然と足がゆっくりになった。

「そう？　えみちゃんのほうがおもしろいよ」
「それ、褒めてますー？」

楽しげな二人の会話。きょろきょろと視線だけ動かし辺りを見渡すと、来客スペースで女の子と笑い合う臣がいた。

打ち合わせしてるんだろうけどデート中のような雰囲気。二人とも楽しそうだし、なんだかお似合い。

ああいった光景は見慣れているけど、やっぱり見ていていい気持ちはしなくて、俯き加減で横を通り過ぎる。

「都倉さん、今彼女いないんですかー？」
「うん、いないよ。フリー」

だけどどうしても耳だけがそっちに集中してしまい、聞きたくないのに聞いてしまう。

もしかしてお嫁さん候補に入れちゃった？
そんなことまで考え始めてしまったものだから、足がなかなか前へ進まない。