ーかのんー

ドアの開く音で目が覚めた。

そこに居たのはお父さんだった。

「おはようございます。」

私は急いで起き上がり、あいさつをした。


お父さん「おはよう。大丈夫かね?」

「はい。おかげさまで。あの…」

お父さん「ん?」

「ちひろは…」

お父さん「大丈夫だよ。すぐ戻るから。」

「そうですか…」

お父さん「ねえ、かのんちゃん?」

「はい。」

お父さん「ちひろの事は好きかね?」

「え?」

お父さん「2人が出逢ったのも何かの運命なのかなって思ってな。」

「運命…」


お父さんは、遠い目で窓の外を見つめていた。

お父さん「ちひろの母親はね、心臓病で亡くなってるんだ。まだちひろが5つの時に。でも、あの子は泣かなかったんだ。必死で我慢して俺の事を気遣ってくれていた。」

「そうだったんですね…」

お父さん「ちひろは、もうそんなには長くはないんだ…」

「え…?」


お父さんは、ハッとした顔をした。
そして、今のは冗談だよ。と言い残し部屋を出ていった。


取り残された私は呆然としていた。