天然なの?
それともわざと勘違いするような言い方?
いや、そんな計算高い人には見えないし、、、
「須藤さん?聞いてる?」
!!!!!
ちちち、、、近い!!
覗き込むようにグイッと顔が迫ってきた
無理ー!!!!
心臓一つしかないんだから、身が持たない
仰け反るように身体を離してから答えた
「上杉謙信」
「じゃあ、俺は須藤さんに見出だされたんだ」
意味が分からず首を傾げた
「俺、直江兼続だからさ」
謙信の義を継承した一人。
いや、本来なら継承者は"直江兼続"に。
そう思っていたんじゃないかと一説にはある
なんか、やたら顔が近いんだけど、、、
もしかして?
「ねぇ、瀬戸内くんて、目悪い?」
「んー、あー、最近視力落ちたかもなー」
「勉強しすぎ?」
「まさかー。こう見えて読書家だからね」
意外かも
いつもみんなに囲まれて、輝いてて、、
だから、読書なんて全然イメージが湧かない
それよりも何より
こんな近くでこんなに沢山話したのは初めてだ
片想いして三年目、僅かに光が差し込めた瞬間。
せめて、友達になれたら、、、
天にも昇る幸せなひとときはチャイムと共に
強制終了となった
休み時間になればきみは教室から出ていくんだ
その背中をみつめるだけ
でも、今日はレアな収穫もあった
直江兼続が好きだということ。
読書家だということ。
それから、、、眩しい笑顔を私にくれたこと。
きみがくれたものは大切に心のタンスにしまうんだ
鍵をかけて、簡単には開けられないように
私の宝物だから、、、
放課後、いつものメンバーと他愛もない話をして
帰ってたとき
本屋から出てきた、きみを見掛けた
もちろん一人じゃなかった
隣には小さくて可愛らしい女の子
女子校のセーラー服はこの子のためかと思う位に
よく似合っていた
あぁ、そうか
誰がどう見ても恋人
ピッタリくっついて、微笑み合って、
私の中にドス黒い得たいの知れない物が、
これ見よがしに流れ込んでくる
嫉妬だ
片想いでいい。
ただのクラスメイトでいい。
そんなの嘘っぱちだ
気付かれないように、笑顔の仮面を装着した
「ねー、日曜さ、買い物行く?」
「いーよー。萌から言うの珍しいじゃん」
「じゃあ、決まりね。和哉と夏輝も来る?」
「なんだ、ついでみてーだな」
「どうせ、荷物係り欲しいだろうし、いんじゃね?」
そんな話をしながら通り過ぎた
きみは当たり前だけど気付かない
それがまた悔しくなる
所詮、きみの中の私はヒラヒラと目の前を飛ぶ蝶
いるかいないかも気にも止めない
わかっていたこと
だけど、リアルにそれを見たら私の心は脆くも
崩れてしまう
きみの行動一つで私は一喜一憂するんだ
叶わない恋
きみには大切な人がいる
それは私じゃない
私ならいいのに、、、
きみの瞳に映るのが私だけならいいのに
「おはよう、須藤さん」
「おはよう、瀬戸内くん」
同じクラスになって半年
いまだに、私たちは苗字でしか呼び合わない
仕方ない
ただのクラスメイトだものね
そこからレベルアップすることはない
内に秘めた想いをかかえて、このまま卒業するんだ
友達にすら昇格出来ないままで、、、
そんな私の恋が動いた
周りからすれば微々たる変化だけど、私にしてみたら
エベレストへ登頂するくらいの凄さだ
「須藤さん、名前で呼んでもいい?」
「え?」
「あー、嫌ならいいんだ。なんか苗字って距離
感じるじゃん?」
なにそれ、、、?
距離感じるとか
変に期待しちゃうじゃない
だけど、せっかく舞い込んだチャンスだもん
受ける以外他ない
「い、いいよ。」
「じゃあ、俺のことも名前で呼んで。な、萌」
「、、、っ、、」
いきなり呼びすてー?!
威力半端ない
録音して毎朝その声で目覚めたい
そのこと考えたら逆に興奮して夜寝れないかも
しれないけど、、、
あぁー、駄目だぁ
何回でも呼んで欲しい
「萌?どうかした?顔、、ぷっ、真っ赤」
「へ?うそ、あ、な、なななんでもない」
顔の前で激しく手をブンブン振るけど、時すでに遅し
イタズラな笑みを浮かべたきみは、、、