「君さ……今の聞いてた?」
「今の? 何か言ってたの?」
そう言えば、王子は深くは追求してこないだろう。
下手に「聞いてない」って答えると返って疑ってしまうからね、これがベストアンサー。
お互い知らないフリをしなくては。
予想通り、王子は私の返答に口を閉ざした。
……とはいえ王子様、人格崩壊の危機。
だけど、まだ信憑性がないから、もう一度素を見せてくれたら確信できるんだけどな。
「……お前、その顔やっぱり聞いてただろ」
「……!」
王子様の声は爽やかで中性的な、でも聞いていて心地いい声。
だけど、今の声は先ほど聞いた低くて掠れた声だ。
王子様の普段の声とは月とすっぽん並みに違う。