「ママ、お話会楽しかったね!」
図書館の出入り口を通った子供がニコニコ笑顔で言う。お話会?ああ、子供が大人と一緒に見る、絵本の読み聞かせか。私も小さい頃によく行ってたな。
「あのさ、」
託が気まずそうに口を開く。
「なに?」
「歌純と一緒に見たんだけどさ、記念にやるよ。」
記念?なにを見たの?まさか、お話会?
おそらく予想通り、託と歌純がお話会で手に入れたであろう、小さな布のしおりと、布の絵本を、託は、ひなつに手渡す。
すごく丁寧に作られた感じで、温かみがある。すごく嬉しい。わ、本当に嬉しい。
「え、ありがと。嬉しい!」
「感謝しなさいよ、二つのうち、一つは私の分なんだから。ありがたく思いなさい。」
歌純が偉そうに腕を組んで、偉そうな口調で言う。
「ありがとう、歌純ちゃん、氷山くん。」
あ、そうだ。ひなつは、先程奇妙な人にもらった水族館のチケットを取り出す。
「何?お礼?商品券?」
「んーん、ちがう。水族館のペアチケット。二人にあげるよ。よかったら、デートして。」
「えっ!」
素っ頓狂な馬鹿でかい声をあげたのは、歌純。
託は、チケットをじっと見つめている。
「わ、私はいいけど、た、託が…」
「…これ、去年のじゃねえ?」
「え?」
歌純とひなつの声が重なる。え、マジ?そうなの?
慌てて確認するひなつ。あ、たしかに去年の今日の日付ついてる。あれ、あの人詐欺師なの?ただのからかい?
「本当だ。謝る。ごめんなさい。」
「わざと、じゃないよね…?」
不安げな歌純に、慌てて首を振るひなつ。
「ちがう!本当に、誤解!」
「これ、裏にサインがある。た、けお…。」
チケットを見ていた託がポツリと呟く。裏を覗き込むひなつ。
『TAKEO.W』
「たけお、さんだったのか…。あの、嘘っこ外人。」
「誰、それ?」
怪訝な声で聞く歌純。
「ん?なーんか、怪しい人。」
「怪しい人からもらったもの、俺らに渡すなよ。」
託の意見はごもっともだ。二人も同意する。
「うん。」「たしかに…。」
少しの沈黙の後、三人は、途端に爆笑する。変な話だ。
「もー!ひなつちゃん、危ないもの渡さないでよね?」
「ごめん!悪気はないんだ、許してくれ。」
「許す代わりにジュース奢れ。」
えー、託の要求に笑って返すのみで、実際奢る気の無いひなつ。まあ、託も実際に奢らせる気、は無いに等しいのだが。
「ま、でもさー、二人から愛のプレゼントもらえて、私は幸せかー。」
ひなつの発言に、顔をしかめる奴がいた。
「誰の愛だと?俺はそんなもん、込めてない。」
「あ、私もー。」
えー、ひなつはチケットとプレゼントごと大きく動いて落ち込むふりをする。だが、二人は特に気にしない。落ち込んでる『ふり』なのは分かりきっているからだ。
「さ、雨がひどくならないうちに帰ろうよ。」
「はーい。」
歌純の声かけで、その場で別れるひなつたち。ひなつは、別れ際、プレゼントのお礼もちゃんと思い出して、しっかり言った。託の声かけがなかったら忘れていたところだった。危ない、危ない。
帰宅後、先程もらった布のしおりと布の絵本を、机の上に飾るひなつ。嬉しいな。
今度、お礼に何か贈ろうかな、二人に。
図書館の出入り口を通った子供がニコニコ笑顔で言う。お話会?ああ、子供が大人と一緒に見る、絵本の読み聞かせか。私も小さい頃によく行ってたな。
「あのさ、」
託が気まずそうに口を開く。
「なに?」
「歌純と一緒に見たんだけどさ、記念にやるよ。」
記念?なにを見たの?まさか、お話会?
おそらく予想通り、託と歌純がお話会で手に入れたであろう、小さな布のしおりと、布の絵本を、託は、ひなつに手渡す。
すごく丁寧に作られた感じで、温かみがある。すごく嬉しい。わ、本当に嬉しい。
「え、ありがと。嬉しい!」
「感謝しなさいよ、二つのうち、一つは私の分なんだから。ありがたく思いなさい。」
歌純が偉そうに腕を組んで、偉そうな口調で言う。
「ありがとう、歌純ちゃん、氷山くん。」
あ、そうだ。ひなつは、先程奇妙な人にもらった水族館のチケットを取り出す。
「何?お礼?商品券?」
「んーん、ちがう。水族館のペアチケット。二人にあげるよ。よかったら、デートして。」
「えっ!」
素っ頓狂な馬鹿でかい声をあげたのは、歌純。
託は、チケットをじっと見つめている。
「わ、私はいいけど、た、託が…」
「…これ、去年のじゃねえ?」
「え?」
歌純とひなつの声が重なる。え、マジ?そうなの?
慌てて確認するひなつ。あ、たしかに去年の今日の日付ついてる。あれ、あの人詐欺師なの?ただのからかい?
「本当だ。謝る。ごめんなさい。」
「わざと、じゃないよね…?」
不安げな歌純に、慌てて首を振るひなつ。
「ちがう!本当に、誤解!」
「これ、裏にサインがある。た、けお…。」
チケットを見ていた託がポツリと呟く。裏を覗き込むひなつ。
『TAKEO.W』
「たけお、さんだったのか…。あの、嘘っこ外人。」
「誰、それ?」
怪訝な声で聞く歌純。
「ん?なーんか、怪しい人。」
「怪しい人からもらったもの、俺らに渡すなよ。」
託の意見はごもっともだ。二人も同意する。
「うん。」「たしかに…。」
少しの沈黙の後、三人は、途端に爆笑する。変な話だ。
「もー!ひなつちゃん、危ないもの渡さないでよね?」
「ごめん!悪気はないんだ、許してくれ。」
「許す代わりにジュース奢れ。」
えー、託の要求に笑って返すのみで、実際奢る気の無いひなつ。まあ、託も実際に奢らせる気、は無いに等しいのだが。
「ま、でもさー、二人から愛のプレゼントもらえて、私は幸せかー。」
ひなつの発言に、顔をしかめる奴がいた。
「誰の愛だと?俺はそんなもん、込めてない。」
「あ、私もー。」
えー、ひなつはチケットとプレゼントごと大きく動いて落ち込むふりをする。だが、二人は特に気にしない。落ち込んでる『ふり』なのは分かりきっているからだ。
「さ、雨がひどくならないうちに帰ろうよ。」
「はーい。」
歌純の声かけで、その場で別れるひなつたち。ひなつは、別れ際、プレゼントのお礼もちゃんと思い出して、しっかり言った。託の声かけがなかったら忘れていたところだった。危ない、危ない。
帰宅後、先程もらった布のしおりと布の絵本を、机の上に飾るひなつ。嬉しいな。
今度、お礼に何か贈ろうかな、二人に。