はじめの一歩。

「来週、あー、歌純の誕生日、来週の水曜日だ。」


しっかり自分を含んだ、メンバー五人分の誕生日を覚えている、マメな林檎。歌純は、来週、16歳になる。メンバーで3番目に誕生日がきて、林檎と託はすでに16歳組、波音とひなつが、まだ15歳組である。


ケーキ代、今回は私が出そうかな。歌純、本当に金欠なのかもしれないし。やっぱり今度、こっそり聞いてみようかな。他の子に知られたら、歌純が嫌に決まってるよね。歌純を傷つけることはしたくないから。

林檎と歌純は、中学生の時、とても仲が良かった。

小学生の時から、もともと仲はよかったのだが、中学時代の同級生にも認められた仲の良さは、絶対にひなつは知らない。知るわけがないんだ。あんな子。

学校に来ないで、犬の散歩して、学校に来ないでスーパーに親と買い物に来ていたあの子なんて、怠けているとしか思えない。

今も、登校日数が少ない高校に行って、普段遊んで暮らしてるんだと思うと悔しすぎる。なんで真面目にしないの？小学生の時は、大人しくて真面目だったでしょ？私は、あの子の口数は少ないけど、しっかりした真面目なところ、密かに尊敬してたのに。どうして頑張らなくなっちゃったの？…分からないよ。本人にも聞けない。

ひなつは、林檎の激しい感情のせいで、普段の遊びの時、軽くいじめのようなものにあっていたのだった。

林檎が不穏な状態のその頃、ひなつは、のんきに明日、読みたい本リスト、なんてものを作り、ていねいに色付けをしているところだった。線から色がはみ出ないように、じっくり。

ひなつの真面目さは全くなくなってしまったわけではないが、少なくとも、それが勉強に生かされているわけではないために、林檎にはひなつのお気楽な行動が気に障って仕方がないのだ。


ひなつが中学生時代に、普段何をしていたか知らない分、前に外で見かけた時のひなつの笑った横顔が、問題のあるものに感じてしまったのだと、気づかずに林檎はひなつを軽蔑し続けている。


歌純の誕生日会は、ひなつ抜きで開催しようかな。


ひなつを誘わなきゃいいんだ。あの子、どーせ歌純の誕生日なんてどーでもよくて覚えてないだろうから。場違いに来て、迷惑な態度取らないで欲しいし。


林檎は早速、ひなつ以外のメンバーに、来週の土曜、近くのファミレスで集まることを伝える。

誕生日なのは、その時まで連絡を放っておくことにして、代わりに自分がプレゼントを用意しておこうと、林檎は計画するのだった。