帰宅後、ひなつは今日の嬉しさを振り返る。

大島くん、今日も可愛かったなぁ、一つ新発見も。

へその近くにホクロがある、今日情報が増えちゃった。嬉しいなあ。

ひなつは幸せを感じてふわふわ浮いている。
実際、浮くことのできる体重ではないのだが。
浮いているのは、心だ。浮かれている。



そんな、ひなつのもとに一件メールがきた。

「あ、歌純ちゃんからだ。」





『件名 お知らせとお願い

さっき、託から連絡を一つ預かりました。
明日、もしよかったらお昼過ぎ、市立図書館前にいるので一緒に見たいものがある、そうです。


さて、ひなつちゃん。私からお願いがあります。

託の事、あまり気にしたくないんです。心配なことを増やさないでほしい。平和、を心がけてください。お願いします。

本田 歌純より』



ん?明日?氷山くんと二人で?図書館…。本は好きだからいいんだけど、何の用事だろ?

それと、お願い…。心配事ってなに?穏やかなのは、最先端の新しい情報より、過去の思い出話とか、そういうこと?うん、心がける。歌純ちゃん、大丈夫だよ。たぶん。


ひなつにはよくわからなかったメール文だが、これは、歌純の悲痛な恋の叫びを表す内容文だったのだ。ひなつにはメールの習慣がないため、返信する必要があると思っていなかったのだが、歌純は、返事が未だこないことに、苛立ちを感じていた。

「♪ー♪ーー」

電話だ。相手は中川 林檎。電話に出る歌純。


「歌純、今何してるの?」

「え、うーん?今、寝てたとこ。」

とっさにウソをつく歌純。すぐに林檎にはウソだとわかった。


「へえ、家の用事はどうなったの?」

「あ…、も、もう終わったの、あは、風呂掃除なんて嫌だよねー。」

ウソにウソを重ねる歌純と、それが簡単にウソだとわかる林檎。林檎は、本当のことを言ってほしいだけなのだ。


「じゃあ、またね。」

「うん…。またね。」

結局、何事もなく電話は終わった。おかしいな、リンちゃんが電話してくるときは、何か報告があったりするんだけどな。ま、いっか。歌純は電話が終わった途端、まだきてない、ひなつの返信を思い出して、ため息をつく。

「もう、羨ましいくらいなのに。」






大島 波音は、中川 林檎にメールをしていた。


『件名 次の予定はいつですか?

中川、次に五人で会うのは土曜日ですか、日曜日ですか。返信お願いします。

大島 波音より』


林檎はこのいつもと違う敬語のくせに、内容文が子供っぽい波音のメールを毎回、少し楽しみにしている。なんとなく、明るい気分になれるのだ。