「あたし帰るよ、ひなつ、ゴミ片付けといて。」


林檎が席を立つ。歌純がいないとつまらないらしい。

「はい。林檎ちゃん、またね。」

「…また。」

「じゃーねー、中川!」

中川 林檎が大島 波音に手を振る。波音が嬉しそうな笑顔を見せる。横からそれを見るだけで、ひなつは幸せを感じてしまうのだ。


珍しく、氷山 託がうつむいて不機嫌そう。だが、それも一瞬、林檎が去り、波音が席に戻ってきて、

「ねえ、さっきの腹踊りはどうなのでしょうか?」

「大島くん、日本語、おかしい。」

「俺は、へそ付近にホクロがあったの見つけただけ。」


「えっ!!」

波音とひなつが驚く。嘘でしょ、そんなとこまでよく…。

「前に歌純が、言ってたんだよ。波音のへそ近くに茶色いホクロがある、って。」


「あー、本田に前、水かけられて着替えた時、そんなことを言ってた人が歌純という名前だったかも…」

「同一人物じゃん!本田 歌純ちゃん。…へえ、ホクロ、見たい。見せて?」


期待に応えて、波音がちらりと服をめくってくれる。


「あ、ほんとだ。ちっちゃくて可愛い。大島くんみたい。」


「俺は、かわいいじゃないの、かっこいいを目指してるの。カンチガイしないで。」

「無理だな。」

「うん。」


そんなー、波音がへそ近くのホクロごと、全身で嘆く。へそのホクロは、くすぐると、くねくねと動き回る。要するに、くすぐったいってことだ。


「あは、津田ー、くすぐったい。やめてっ。」


やめてと言われたのでやめてみる。


「あ、終わった。ふう、助かったぜ。」


「帰還、おめでとう。記念にポテトやる。」

「わーい。あ、しなびてる。」

「時間経ったからね。私も食べちゃお。」


三人で残りのポテトを平らげ、店を出る。


「明日はなんか、予定あんの?」

「え。」「え。」


「なに?なんか問題?」

「明日は、五人で会えないよ。」


「何で?」


察しが悪く、波音とひなつが軽く苛立つ。


「だって明日は…」


「テスト、4分の3人、事件。発生日だから。」


「テスト?ああ、なんか言ってたな。」


もう、その日テストのない学校の私まで覚えていたのに。氷山くん、興味ないことでも五人のことなら覚えておいてよね。ひなつは、少し託に腹が立った。


「じゃ、津田は、予定ないわけ?」


「うーん、午前の登校で学校の本返したら、用無し。」


ふーん、託が珍しく、何かを考えている様子。



そこでなぜか波音が慌てて、

「じゃ、じゃあ!次は来週の土日のどっちだか、あとで中川に聞いておくね。…みんな、帰ろ!」

「うん。」