いつもとは違う雰囲気を醸す親父と俺を見詰めるお袋の表情は、酷く心配だと言わんばかりのもので。
それを一瞥した俺は気を取り直そうと続きを促すことに。
此方の意図を汲み取ったらしい親父は一度点頭を落とすと同時に再度口を開く。
「宏也は今年で大学一年目だったよな」
「?、そうだけど。それがどうしたんだよ」
目元を緩める親父の表情は一見穏やかなものに見えるが、言外に伝わるニュアンスはそんなに生温いものじゃ無かった。
察しろ、と。
俺の意志くらい察しろと。
言葉にせずとも緊と、頑なにそう告げられている気がして。
「――――――…兄貴の、後釜か」
俺の口から零れた言葉はしんと静まり返った部屋に嫌というほど響き渡る。
何度も言うようだが、俺は決して親父を非難しようとしている訳では無い。
これが、当たり前のことだからだ。
長男である兄貴が継げなくなった今、その役目を担えるのは俺を除いて他に居ない。