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「宏也か」

「紅茶にする?それともコーヒー?」

「………いや、いい」


階段を下りて大きなダイニングルームの扉を開けると、声を掛けてきたのはやはり親父とお袋だった。








表面的にはいつもと変わらない二人。

だがこの間の一件が今も尚尾を引いているのは明確で。今にも壊れてしまいそうな笑顔が逆に俺の心を抉った。




「―――親父。話ってのは?」

「随分と単刀直入だな、お前は」









頬を指先で掻いて苦笑を零した親父は手にしていた雑誌をテーブルに置くと、徐にその瞳を俺に向ける。

―――――その表情が不意に兄貴のソレと重なって見えて、思わず俺は顔を逸らした。












「智に似て賢いお前のことだ。予想くらいは付いていたんだろう」

「……やめろよ、兄貴と比べるのは」

「悪い。そんなつもりじゃ無かった」






俺は別に、咎めるような口調で言葉にした訳じゃなくて。

しかしながら、やはり兄貴のことに関しては敏感にならざるを得ないらしい親父は瞬時に顔を歪めてそう口にした。