重い溜め息を吐き出す。

丁度4年だった兄貴は、本来であれば今年から親父の近くで経営に携わることになっていた。




事故で急死なんて、未だに信じられない。信じたくない。

黒で統一された自分の部屋で深く息を吐き出した俺は、途方も無い感情の処理に頭を抱えていた。


と、そのとき。




「宏也?………私」

「……、お袋」

「お父さんとね、ちょっと宏也に話したいことがあって。落ち着いたらで良いから、下に来てくれる?」










そんな言葉を口にする母親が尚も涙声なことに気付く。

それを努めて隠そうとするお袋に一瞬だけ息を詰めた俺は、「すぐ行く」と返した。



彼女の気配が扉の向こうから消えたことを悟ると、小さく本音を空気に紛れ込ませる。




「――――俺じゃ代わりになんねぇよ」











どうしたって、俺の上にはいつも兄貴が居た。

越えたくてずっともがいてきた。でも、もう越えることも出来ない。




自らに対する嘲笑と苦笑で、胸中は苦い思いで一杯だった。