サッカーのルールは、中学の頃に武田に聞いたけれど、ややこしくてよく分からなくて。とりあえず、相手の方に蹴ったらいいよ、とちょっと諦めたように言われたのを思い出す。

 あの時、もう少し分かるまで聞いていたら、こうして試合を見た時に面白かったのかもしれない。

 前半が終わって、10分間の休憩の時、桜庭くんは私の方を見なかった。その代わり、私達がいる側とは少し違う一点を見つめていて。

 私はその視線の先に、試合前に見かけた綺麗な女の子と話している東海林先輩がいた。嫌な予感にざわりと心がざらつくのを感じて、私は桜庭くんから目を逸らした。

 鳴り響いたホイッスルに、周りの空気が沸き立つ。その温度で試合が勝利で終わった事が判った。

 私はずっと桜庭くんから目を逸らさずに居たけれど、やっぱり桜庭くんは私の方を1度も見なかった。

 試合前は、手を振ってくれたのに。

 桜庭くんが視線を向ける先には、やっぱりあの女の子の姿があった。