私は、今までサッカー部の試合とか見に来たこと無かったから、桜庭くんがどれだけ女子に人気かなんて考えてなかった。付き合うのは微妙な人って評判でも、アイドル的に好きっていう子は意外といっぱい居るんだ。

 私 今日、桜庭くんと話したらダメなんじゃない? 一緒に帰ってるとか、ましてや……キスしたとか知れたら…… 考えたら血の気が引いた。

 もしかして、桜庭くんって、私と帰ってるのが目立たないように時間遅くしてるのかな……?

 サッカー部が終わるのは運動部の中でも遅い方だ。そこから更に、桜庭くんが私を迎えに来るまで時間を要して、私と桜庭くんが学校から帰る時はほとんどの生徒が下校済み。時々昇降口もしまってて、職員玄関から出る時もある程だ。グラウンドの照明も大抵消えている。いままで誰かに一緒に帰ってることを指摘されたことは無かった。

 今日は、絶対に目立たないように大人しくしていよう。

 私はそう決めたのに、後ろから聞こえてきた小声の会話に背筋が凍る。

「桜庭くん、あの子に手振ったんじゃないの? そこの、背低い子。最近よく廊下で話してるって聞くよ」

「なにそれ?! 」

 あぁ、嫌だ。聞きたくない。今すぐ逃げたいかも……

 ただ、そんな話も一度開戦のホイッスルが響けば静かになった。