諦め半分で臨んだ面接で何を話したのか正直覚えていない。
 気負わずに済んだお陰なのか、採用の連絡をもらえて今に至る。

 採用されたのは、初めて会議に参加した時に谷から言われたことがそのまま決め手だったのかもしれない。

「いまどきガラケーの若者なんて珍しい。
 相川さんみたいな子に使ってみたいと思わせる機能や追加アプリを考えた人には金一封。」

 そんな物差しの為に採用を決めたのだろうか。
 それは今でも分からない。

 自社製品を試していないどころか、携帯はガラケー。

 モバイルヘルスケアを開発する会社に勤めている社員にとってはあるまじきこと。
 それが許される上に重宝されるように仕向けてくれた谷には感謝してもしきれない。

 もちろん彼が自分を推して採用してくれたことも。