そう決めてスカートをパンパン、と二度ほど叩いて、ガラガラと図書室のドアを開き、私はユーコさんの彼氏である、久保田先輩のクラスへと足を向けることにした。

「おっ、白石、元気か?」

「はい、お久しぶりです」

私の姿を見て、笑顔を見せてくれる久保田先輩は、私が唯一話が出来る先輩と言っても過言ではない。

もちろんそうなったのは、ユーコさんが紹介してくれたおかげではあるんだけれど。

「ひとりってことは、まだ相手見つかってねぇの?」

「はい。久保田先輩はどうなんですか?」

「聞いてくれよ、白石。俺なんてコイツだったんだぜ」

そう言って先輩は、隣の男の人の肩をバシバシと叩く。

「有り得ないよなあ。同じクラスのしかも男だぜ。面白くもなんともない」

先輩。私はむしろ、その展開を望んでいたんですよ。

菜穂子ちゃんかユーコさんかリエさん。その三人が相手なら。

いや、そこまで贅沢は言いません。せめて緊張せずに喋ることのできる顔見知りの子と相手ならって思っているんです。

と、心の声は先輩には伝えずに、私はサンドウィッチを注文する。

「ほい、サンドウィッチとオレンジジュース」

「ありがとうございます」

私がお礼と言うと、久保田先輩がまたニッコリと笑った。

「ま、どうしても見つからなかったらユーコでも俺でもいいから声掛けな。なんとかして見つけてやるからさ」

「……ありがとうございます」

ごめんなさい、先輩。きっと私は頼んでまで相手を探しません……。