数日経っても、彼に会いたくなる。

時間が経てば、忘れられると思い込んでいたのに、忘れられるはずなんてなかった。

自分から、終わりにしたのにおかしな話だと思う。

会いたくて

会いたくて

『愛梨』と優しく呼ぶ彼の姿を夢に見てしまう。

『透さん』と呼ぶと、あの爽やかな笑みを浮かべながら見つめる目は、どこか意地悪で…『好きって言えよ』と、私の唇を指でなぞる。

言われるまま『好き』って言うと、爽やかな笑みを浮かべた顔から艶めかしい男の顔に変わり、私の顎を親指でクイっと掴んで、唇目掛けて彼の顔が近きキスしそうになると…目が覚めて、別れた現実を思い知る。

その度に、彼の腕の中の温もりが恋しくて…

自分の腕でギュッと抱きしめてみるけど、寂しさが増すだけだった。

「あいり、…愛梨」

「あっ、詩織さん…お疲れ様でした。先に上がったのに、何してるんですか?」

早上がりをした詩織さんが、更衣室で待っていた。

「何してるんですか?じゃないわよ。愛梨こそ、ぼーとして、仕事中もカラ元気だし、無理してる姿が痛々しいわ」

「あはは、無理してますかね?」

「してる。溜まってる物全部吐き出したらいいわよ」