彼の側に居られるなら、セフレでもいいと割り切っていたつもりでいたけど、ちっとも割り切れていなかったらしい。

昔から決まっていた婚約者…

[lodge]のオーナーとしての透さんしか知らないから、彼が神崎家の御曹司だという事実をすっかりと忘れていた。

アーァ…私ってバカだな。

関係を始めた時に、言われたのに…

『俺は恋愛には向かない男だ。恋なんてするなよ』

どっぷりと彼にハマっちゃって恋しまくってるなんて…

セフレ達と関係を切り、ただ1人のセフレに選ばれて、浮かれて、彼の態度から、セフレから恋人になれるかもなんて内心どこかで期待していた。

恋しちゃいけなかった…

期待なんてしちゃいけなかった…

私と彼とでは、住む世界が違うって知っていたのに…

こんなに好きになってから、気づくなんて…

バカだな。

釘をさされていたのにな…

乾いた笑い声を上げながら、頬を伝う涙を拭いた。

スマホを出して彼にメールを送る。

『婚約者が出てきたなら、遊びは終わりにしましょう。さようなら』

そして、そのまま勢いで彼のアドレスを消去したその日を最後に、私は[lodge]に行かなくなった。