「凹むのなら遠慮しとくよ。
俺が何事にも動じない大きな心を持つ日が来たら、その時には見せてほしい」


咲子は意地悪そうに顔をほころばせた。


「分かった…
でも、しばらくは封を開けたくない。
お守りとして持っていたいの」


咲子はそっとその手紙を胸元に忍ばせた。

映司は何だか涙がこみ上げる。
咲子にとっての結婚は全ての始まりで、その大切な日に自分が関われた事が何よりも誇らしかった。



「そろそろ出発ですので、こちらへどうぞ」


巫女の姿をした女性が、映司と咲子を呼びに来た。
二人は顔を見合わせて手を繋いで立ち上がる。

一歩外へ出ると、参道を一緒に歩く親族や、映司の仲間たちが待機していた。
そして、雅楽が境内に響き渡り、映司と咲子は親族の先頭に立ちゆっくりと歩き出す。

五月晴れの良き日、心地よいそよ風が幸せな二人を包み込んでくれる。