映司は笑いながらもちろんと言って頷いた。


「じゃ、映司さん、白馬に乗ってくださる?
王子様はいつも白馬に乗っているものだから」


映司は顔には笑みを張り付けて、でも、心の中では絶句した。
だけど、咲子がそう言うだろうと予想して、嫌々だけれどその件についてはオプションとして準備はしている。


「ちゃんと考えてるよ。
咲子ちゃんの夢を叶えるためなら、白馬にでもペガサスにでも乗ってやる。
だから、涙を拭いて、今日一日を乗り切ろう」


すると、誰かが入り口のドアをノックした。
顔を出したのは、咲子の祖父の孝一だった。


「準備はできたか?
もうそろそろ始まるぞ。

その前に、咲子に渡す物があったから忘れない内にと思って」


孝一はそう言うと、咲子にピンク色の封筒を渡した。


「咲子、これ、覚えてるかな?
咲子が15歳の時に、将来の自分に宛てた手紙だ。
自由結婚をした大人になった私へと、皇室へ嫁ぐ可哀そうな私へと、二通書いておじい様に渡しただろう?

その時の私に渡してくださいって」


咲子はやっと思い出したのか、その手紙をジッと見ている。