映司は咲子の待つ部屋へと向かった。
袴姿はとても歩きにくく、何度も前に転びそうになる。


「こちらです」


お手伝いさんはそう言うと、気を利かせてその場からいなくなった。
その小さな待合室に白無垢姿の咲子が見えた。
おしとやかにちょこんと椅子に座っている。


「映司さん、笑ったら怒りますからね」


映司はその言葉に笑いそうになる。
この真っ白い着物は素敵だと思うけれど何で顔まで真っ白にする必要があるのか、グローバルな映司には全く理解ができなかった。
そんな映司の心の中を見透かしたように、咲子が忠告する。


「このお化粧は七条家のしきたりなんです。
これでも薄い方なんですよ。

映司さん、私の顔を飽きるほど見てください。
早く慣れるように…」


咲子のその言葉に映司はまた笑ってしまう。
咲子のチャーミングな一面は本当に可愛くて仕方がない。

映司は咲子の前に跪いて、咲子の真っ白い手を取った。