ツッコミどころ満載の映司は、その質問をしてきた相手を睨むしかなかった。
もちろん、そんな事を何の躊躇もなく聞いてくる相手は凪しかいない。
「どうなってる?って聞きたいところだけど、聞きたくないから何も言わないでくれ。
実は、怖くて鏡を見てない。
七条家の年配のおじさんが、なんか、見たことのないポマードらしき物を頭に塗りたくっていたのは分かった。
そんなにヤバいか?」
映司は皆の顔が笑いを堪えているのが分かる。
すると、その質問に答えたのは、やっぱり場の空気を読めない凪様だった。
「変か、変じゃないかって聞かれれば、かなりの割合で変。
笑えるか、笑えないかって聞かれれば、120%笑える」
凪のその言葉で、皆、一斉に笑い出した。
「映司、そのオールバックは、お洒落で洗練されたお前には可哀そうなほど似合わないよ。
昭和の頃のプロレスラーによくこんな髪型の人いたよな。
今、ここにいる映司は、俺の知ってる映司様じゃない」
謙人はそう言うと、映司から顔を背けた。
背けた途端、肩を震わせて笑っている。