母は日本人の父を愛し、それと同じくらいに日本をとても愛していた。
その父と母のライフスタイルが、それからの映司の基本となった。

それは、結婚に関しては特に顕著だった。
束縛はしない、お互い好きな事をする、それを尊重し合う仲になる。
そして、その考えは映司の根本にある当たり前の自由だ。

そんな映司が、自由のない束縛された子供時代を過ごした究極のお嬢様に恋をした。
色でいえば白と黒、天気でいえば晴れと雨。
そんな対称的は二人が一本の線で結ばれた。
本当に不思議な巡り合わせだと思う。
映司は神様から与えられた縁というものに、神妙に心の底から感謝した。


そんな風に境内をうろうろしていた映司も、七条家のお手伝いの人達に捕まってしまう。
そして、咲子が準備をしているフロアとは違う場所で、映司は初めて袴というものを身に着けた。

髪型に関しては、ヘアメイク係のおじさんに勝手にいじられて、映司は鏡を見るのが怖かった。

まだ、式が始まるまでには時間がある。
映司はヘアメイクと着付け係の人達が居なくなると、股を広げてソファに寝転んだ。

すると、ドアの向こうが騒がしくなり始めた。
映司は嫌な雰囲気を感じながら、でも、ソファに寝転んだまま寝たふりをする。