「映司さんのお母様は、直接、神社へ来るんですよね?
もう楽しみ過ぎて、昨夜はほとんど寝てないの。

だって、結納の時にお父様にはお会いしたでしょ?
映司さんのお父様の素敵さにため息しか出なかったのに、そのお父様が愛したお母様ってどんなに綺麗で素敵な人なんだろうと思ったら…」


映司の心配の種はまさにそこにもあった。
映司の母は元モデルで、今でもイタリアでプロデューサーとしてモデル事務所を経営している。
とにかく派手好きで楽しい事が大好きな人間だ。

映司はその母に黒のシックな洋服で来てほしいと伝えた。
しかし、イタリア人の母が厳かな神前での結婚式を、ちゃんと理解しているとは思えない。
まず、基本の装いも本人を見ない事には何とも言えなかった。


「母さんは明智君が責任をもって連れてくるって。
明智君の超能力で、母さんを上手に操ってくれることを願ってる」


咲子はケラケラと笑った。
その屈託のない笑顔は、映司の心を和ませる。

とにかく、今日を乗り切ろう。
今日さえ乗り切れば、俺達は本当の意味で自由になるのだから。