だから、今日の神前式は恐怖でしかなかった。
式の流れも一通り教わったが、初めて聞く難しい言葉や単語に映司の脳みそはついていけない。
完全な理系頭脳の映司にとって、古典の教科書に出てくるような言葉は宇宙言葉にしか聞こえなかった。

そして、映司の緊張をマックスにしているのが、神前式の中盤にある誓詞奏上(せいしそうじょう)という神様に誓いを述べる儀式で、その誓詞は新郎が読み上げなければならないという事だ。


「咲子ちゃん、あの誓詞奏上は、やっぱり新郎じゃなきゃだめなのかな?」


咲子は肩をすくめクスッと笑った。
そりゃそうだろう、もう三回以上もこの質問をしているから。


「映司さん、大丈夫です!
映司さんがもしその誓詞を忘れたとしても、私がちゃんと暗記してますから。
その時は二人で言いましょう」


咲子はそう言うと、映司の手を優しく握った。
そして、すぐに話題を変える。