今日は素晴らしく快晴だ。
でも、映司の心蔵は、緊張のせいで今にも破裂しそうだった。
いや、緊張だけじゃない。
厄介な問題が多過ぎるせいで気持ちが全く休まらない。

午後から執り行われる神前式のために神谷盛神社へ向かう車の中で、映司は大きなため息をついた。


「映司さん、分からない事があったらいつでも聞いてくださいね」


咲子は隣で沈んでいる映司に向って優しくそう言った。


確かに、日本の伝統文化とか、それ以前に神社とは何ぞや?とか、神道とは?とか、映司にはさっぱり分からない。
映司はこの七条家の婿になるにあたり、孝一や七条家お仕えの神主様に神谷盛神社の由来や伝統、この先の展望などを長々と教えられた。

映司の母親はカトリック信者だけれども、映司は無宗教者だったのが功を奏した。
七条家は完全な神道だから。

でも、人生の半分を外国で過ごし強烈なイタリア気質の母親に育てられた映司に、日本の文化や伝統の知識はほとんどない。