「ねぇ~学級委員長さん」
昼休み数人の友達と弁当を食べていると聞き慣れない声が僕を読んだ。
林桃華だ。
「な、なに?」
「あははは。何って、美希ちゃんがお腹痛くなって帰ったから学校案内してあげるって言ったじゃん。もう忘れちゃったの?君、私よりも忘れるの早いから、アルツハイマーなんじゃないの?おすすめの病院紹介しよっか~?」
そうだった。3限目の数学の時間に美希が荒い呼吸をあげて倒れだした。それで早退した。美希は大丈夫とは言っていたもののかなり辛そうだった。美希は入学してから1回も学校を休んだことの無い、健康良好だった。だから、みんなは林桃華が転入し、美希の隣に座ったことによって、病気がうつってこの状況におちいったと、言っている。
だから正直行きたくもない。だが、ここで引き下がったら学級委員長としての株が下がる。。。
「あぁ、そうだったな」
と相づちを打って美希が作ってくれた弁当を後にして早速行くことにした。
「じゃぁ、まず1階から行こう。」
「はーい」
教室を出た瞬間廊下にいた皆がそろってこちらを向いた。
ヒソヒソと噂をする者がいる。僕は不貞腐れた顔を作って無理やり連れてこられたような顔をした。一方林桃華の方は、背筋がシャキッと伸びていて、胸を張って、顔をあげて、堂々と歩いていた。
「アルツハイマーがうつる」
と、わざと聞こえるように言ってくるようなやつもいるのに、林桃華はそんなのも気にしないで前へ前へと進んでいく。
「ねぇ、嫌じゃないの?」
とうとう聞いてしまった。
「なにが?」
「何って、あからさまに聞こえてくるじゃん。その…」
「アルツハイマーがうつる。って?」
林桃華は、わざと声をでかく強調して言った。廊下にいた人の大半はこちらに耳を傾けて、黙った。
「え、」
「うつるって言われてもさ~、この病気は感染性じゃないんだもんな~。だってさ、本人がそう言ってるのに、そんなふうに言われてもしょうないじゃん?実際アルツハイマーが感染する病気だったら、政治家さんはみんなこんなに治安いい国作れないよ」
そういう意味じゃないでしょ。と思ったけど。彼女は続けて
「私だってこの病気なりたくてなったわけじゃないし、あと1年だけだし!別にそんなん言われたって気にしないよ」
といった。
僕は少しだけ、カッコイイと思った。
「今、私の事少しだけカッコイイって思ったでしょ??」
とニヤニヤしながら言ってきた。
近くにいる人が皆こちらを見ていたから。
「別に、次二階行くよ」
とわざと冷たい態度をとった。なるべく業務会話以外のやり取りは避けたい。
「はーい」
彼女は能天気なようでそんな事気にも留めなかった。
一通り学校の案内を終えると、林桃華はもう少し見てみたい教室があるからと僕を先に教室に行かせた。好都合だった。あんなやつと歩いてたらへんな噂が立ってしまう。早く教室に戻って美希の作ってくれた弁当を食べよう。
そういえば、林桃華は昼飯を食べたのだろうか。ふと思い浮かんだがそんなことはどうでもいいと思った。