笑う顔が無性に苛ついた。


「あの、止めないでもらえませんか。」


私はこんなどうしようもない日々から解放される筈だったのに。この人は、どうして。


「えー、目の前で死なれるの嫌だし。」

「…は?」

「てか、なんで死のうとしてんの?」


私の腕を掴み、顔を覗き込んでくる。彼の瞳は、私をいじめていたあいつらのような悪意に満ちた目ではなかった。


「なぁ。なんで?」


彼の瞳にあるのは、純粋な興味。私が死にたかった理由を知りたいだけ。



私は初めて怯んだ。

真っ直ぐな彼に怯んだ。


「…いじめ?」


彼が小さな声で囁いた。私はその言葉に小さく息を呑んだ。彼はそれを肯定と受け取ったらしく、「そっか」と納得したように呟いた。


「そんなに辛いなら、死ねばいいじゃん。」


彼は私の腕を離した。


「今度は止めないからさ。」