「貴女は変わった方ですね」

「貴方の方こそ」


先程の涙の表情が嘘のように、朔子の表情は明かりを灯したかのよう。

市助は言葉にこそしなかったが、笑顔を取り戻した朔子に胸を撫で下ろした。


「それでは私はこれで」

「一人で大丈夫ですか」


市助は再び心配をする。今は笑顔で自分の目の前にいる朔子だが、やはり涙していたと言う事は紛れもない真実。

この笑顔は無理して笑っているのではないかと言う事も考えていた。


「ええ。ご心配なさらずに」

「そうも行きません。お送りさせていただきます」


日は落ちてはいない為か、危険は少ないとはいえ朔子が再び泣いてしまうかもしれない。

最悪な場合、見知らぬ輩に襲われる可能性もある。そして女性を守るのが男の役目だと彼は思っていた。


「お断りしても恐らく聞いてはくれませんね。では、お願いします」


朔子は断る事もせずにあっさりと了承するも、表情は何処か曇っていた。

市助はそんな朔子に気付かぬ振りをする事しか出来なかった。