宮岸さんは東京浅草雷門の仲見世通りにある老舗の包丁屋を訪れていた。
 お弟子さんへのお土産として和包丁を買いに来たのだ。

 包丁なら地元行き着けの専門店で買っているけど、せっかく上京して来たのだから本鍛錬手打ちの有名店で新しいヤツを買って上げようと決めていた。

 品物を買って店を出た時に私と顔を合わせた。

「俺に店を手伝って欲しいって?」

 私は深刻な状況を話し聞かせた。

「厨房で夕方からシフトで入る1人が急用で来れなくなってるんです。急だから代わりの人がいなくて」

「それで俺に?」