千羽鶴に願いを込めてーー

朝、太陽の光で目が覚めた。
「あ、やばい、千羽鶴っ」

徹夜しても、千羽鶴折るって決めてたのに。
「ヒローー?あれ?居ない。
まさかっ」

目の前に居たはずのヒロがいない。


ドクンーー!!


心臓のドキドキが、、

突き刺す痛みに変わる。

さっき寝ていたぐちゃぐちゃなシーツなんかじゃない。
綺麗に整頓されたシーツ。
まるで、そこに誰も居なかったみたいな。

「やだ……やだよ、ヒロっ」

わたしは病室を飛び出した。

「すいません、松坂ヒロは!?
ヒロがいないの!」

ナースステーション。
朝早くのナースステーションには、一人も居なくて。

「どうしました?」

やっと現れた看護師は、見るからに新人。
思わず、頼りなさから顔を歪めた。

「松坂ヒロが、朝目覚めたら居なくてーー」


怖いーー。


看護師が、ファイルを手に取る。

「あー、松坂くんは、集中治療室に移されてますね。あそこは、今ーー誰も入れませんよ?」


集中治療室ーー?

なんで、ヒロがそんなとこ。

「ヒロに会いたい!
お願いヒロに会わせて!」

会って安心したい。

「外からなら見れますよ。
案内します」

ヒロに会える。

ヒロにーーーー。








ーーーーピッ、ピッ、ピッ。



ヒローーーー?
なにしてるの?


「ヒローーっ、なんで!!」


今から一ヶ月前。


ヒロが倒れた。


本人は、大丈夫って笑ってたけど本当は違ったの?

機械に繋がれたヒロを、見た時ーー。

ヒロとはきっとバイバイする、そう確かに思った。

「そうだ、千羽鶴っ。
ヒロ、待ってて!わたし、千羽鶴最後までちゃんとーー折るから」

やばい、視界が歪む。

わたしは病室から千羽鶴を集め、集中治療室でひたすら千羽鶴を折った。

ヒロが、好きな千羽鶴を。。


"千ーー鶴が、好きだよ"ーー。

あの時、よく聞こえなかったけど、ヒロは千羽鶴が好き。

千羽鶴を完成させたら、ヒロはまたーー
屈しない笑顔で笑ってくれる。

わたし、頑張るから。

後、999個だから、後ーーもう一つ、、
今日はクリスマスイブ24日。
間に合いそうーー。

ーーーーピッピッピッピッピッピッピッ


いきなり機械が、狂った様になった。

何⁇


医師や、看護師が、慌てた様に治療室に。

ちょっと、待ってよ?
後、一個。
後、一個なんだよ。

震えた手、もうーーー無理。
私は、999個の千羽鶴を抱えて走った。


「ヒロ、後一つなんだよ。
ヒロが好きな、千羽鶴最後まで折らせてよ!
頑張って、折るからーー元気になってよ!

これがわたしに出来る願いなら、、

ヒロが言ったんだよ、千羽鶴が好きだって!」



クリスマスには、"奇跡"が、起きるーー。








「千鶴ーーーー、違う」






ヒローー?



ヒロの声が、わたしを呼ぶ。


苦しい筈なのにーー。

わたしは、ヒロに近づいた。

「千鶴ーー、違う。
俺が、、あの時ーー好きだって言ったのはーー

千羽鶴じゃない……。


千鶴が、、好きだよっ」


"千ーー鶴が好きだよ"ーーー。


嘘ーー。


「ヒローーっ。
わたしだって、ずっとずっとヒロが、好きだった。

わたしは、ヒロがずっと好き!」

君の願いーー。

ヒロが、手を伸ばす先に。

わたしがいる。

ヒロが、、少し起き上がる。
ヒロが、、触れたのはわたしの唇。

ヒローーーー。



「ヒローー、好きです。






大好きーー」













ピーーーーーーーーーーーーーーーッ。












サヨウナラ、、愛する人ーー。



サヨウナラ、、ヒローー。


最後に機械がなって、それが最後でした。

ヒローーーー。


千羽鶴を抱き締め泣いたクリスマスイブ。

初めて、君を愛しいと思ったーー。


初めて想いを伝え、キスをした。


ずっと、好きだったのは




わたしの方だ。








「ヒローーーー





亡くしても好きっ」






わたしの声は、、



もう君には届かないーーーー。


ヒロが、死んだ。


大好きなヒロが、、死んだ。

「千鶴ちゃん。
これ、ヒロから千鶴ちゃんにって」


渡されたのは、「千鶴へ」って書かれた手紙。

なんで今更ーー。

青い空がプリントされた封筒に、1枚の紙。

開くのが怖い。
いない君の、最後の手紙。

ーーーーーーーーーーーー


千鶴へ

俺はあの日倒れた時、もうダメだと聞かされた。
千鶴に、最後に「好き」と言いたかった。

だから、、言ったつもりだったんだけどね。
千鶴には伝わってなかったみたいだな。
俺は、千羽鶴が好きなんじゃない。

一生懸命作ってくれる、千鶴の笑顔が好きだった。

俺は、千羽鶴が好きなんじゃない。







ーーーーポタッ。






わたしの涙。

滲むヒロの優しさ。






俺は、、







千鶴が好きだよーー。













わたしも、ヒロが好きだよ。