ガラッ。

開き戸を開けると

アルコールと様々な料理の匂いが鼻をつく。

カウンターテーブルには、椅子が8つ。

四人掛けテーブルが6つの小さい居酒屋だ。

「いらっしゃい!」

威勢の良い声に迎えられて中に入ると

声に振り向いたみぃや彩先生と目が合う。

………………………………………………。

四人掛けテーブルには、彩先生とみぃが対面に座り

横には知らない男が座っていた。

固まる二人と、気にせず話しかける男達。

みぃの横に立ち

「彩先生、海晴先生………こんばんは。」と話しかける。

「あれっ?知り合い??」

酔っぱらいの二人が聞いているが

二人は答えることなく固まったまま。

「彩先生、洋介さんは知ってるの?」

首を振る二人は、すでに涙目。

携帯を出して、洋介さんに連絡をとると

「直ぐに行く。」と言って通話が切れた。

「すみません、彼女達と話があるので………。」二人を立たせると

「ちょっと、せっかく楽しく飲んでたのに邪魔しないでよ。」と

酔っぱらいが絡んで来た。

「だから、来ないでって言ったじゃない。」

「彼氏がいるって。」

二人の言葉から、合コンでないことが分かってホッとする。

ごちゃごちゃしてたら

「ほらほら、揉めるなら表でやって。
ケンカしたら、警察呼ぶよ!
それと、女の子達が困ってたよね?
俺も注意したでしょう。
酔っぱらってるなら、今日はもう帰って寝な!」と店長が割って入ってくれた。

なんだ、二人で飲んでて絡まれたんだ。

浮気じゃないと安心していたら

「家のが迷惑おかけしてすみません。
四人分お支払いします。」と洋介さんがやって来た。

「おぉ、洋ちゃん。
なんだ、洋ちゃんの彼女?」

店長さんと知り合いらしい洋介さんが丸く納めて店を出る。

穏やかな笑顔はここまでで………

「今度この二人に手を出したら、ここにいられないからな!」と

今まで見たこともない顔で男を睨んで帰らせた。

「はい、海晴ちゃんは航君ね!
彩は帰ろうかぁ!」

彩先生を気の毒に思いながら「ありがとうございました。」と

洋介さんにお礼をいう。

「イヤイヤ、連絡もらって助かったよ。」

手をヒラヒラさせて帰る後ろ姿に

悠人先生と同じくらい、洋介さんを怒らせてはダメだと思った。