玄関の鍵を開けている間も、決して下ろさず

逃げれないようにする。

「航、電話。」

みぃに羽織らせている、上衣のポケットから

携帯のメロディが聞こえる。

たぶん、彩先生だろう。

「別に出ても良いですよ。」

自分は出るつもりはないと、伝えるつもりで言ったのに

「別れたいから、出させるの?」と

意味の分からない事をいう。

はい???

別れると言ったのは、みぃでしょ?

頭の良い彼女らしくない、チグハグな会話。

やっぱり、ゆっくり話そう。

抱き上げたまま靴だけ脱がせて、ポイッと投げ捨てて

ソファーに座らせる。

「流石に疲れたから、もう逃げないでね。」と念を押して

キッチンでコーヒーと砂糖とミルクたっぷりのカフェオレを入れる。

テーブルに2つ並べて置くと

迷うことなく、強引に隣に座り………

いつも悠人先生が唯ちゃんにするように、膝に乗せる。

「嫌!」

慌てて下りようとする彼女を、ギュッと包み込んで

「みぃは、イヤイヤばかりだね。
あまりイヤイヤ言うと、怒るよ。」と笑うと

ピシッと固まってしまった。

「えっ、えっ!…………ウソだよ。
冗談だからね!」

焦ったぁ~

いつも強気の彼女らしくない反応だ。