崩れた壁が残ったドームで

彼女は、涙を浮かべて長い時間お祈りしていた。

「今は、寒いけど………
あの時は、暑い中一面燃えてたんだよね………。
さっき、焼けただれた三輪車が展示されてて
ウチの幼稚園の子供たちとダブったの。
産まれて間もない赤ちゃんは……
ママのお乳すらまともに飲めないで亡くなって……。
死んでいった子供も、抱いていた子供が亡くなったお母さんも
無念だったろうなって思うと………苦しくなる。」

僕も、今日程この場所で胸が痛くなったことはなかった。

自分のクラスの子供たちと接して

子供たちの愛らしさに触れたからだろう。

沢山の人が、子供たちの笑顔にもっと触れて過ごせたら………

この笑顔を守りたいと思うのかもしれない。

僕たちが、過去に行ってこの人達を救うことは無理だけど………

この人達の死を無駄にしないで、子供たちに伝えられることは出来る。

彼女じゃないけど……

今度の職員会議で、考えてみても良いのかな。

「子供たちと鶴を折るのも良いね。」

そっかぁ。

僕たちは伝えることと、祈ることができるんだよな。

やっぱり彼女は………先輩だ。