ー芽依sideー

ふぁーー......

よく寝たー......

あれ?朝...?

なんか、あったかいなー。

あれ?なんであったかいの?


疑問に思い、ゆっくりと目を開ける。

「え...珀?」

「んあ?...おはよ...。」

「おはよ......じゃないよっ!なんで、私が珀の腕の中で寝てるの?」

そうなのだ。目を開けてみれば、目の前に珀。あったかいと思っていたのは、珀の体温で、私はしっかりと珀に抱きしめられながら、寝ていたのだ。

「昨日、抱きしめたら、そのまま寝たんだろ?」

「え...」

そういえば、そうだったかも...。

そうだよ...うわっ私、すっごい恥ずかしいこと言っちゃったんだ...。

昨日の失態を思い出して、顔が真っ赤になる。

すると、珀が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「あーあ、昨日の、芽依チャン可愛かったな〜。『やだ』とか、『ギューってして?』とか......。」

とたんに、さっきよりも顔が真っ赤になっていくのが分かる。

「もう!うるさいっ!」

「甘えん坊になって、可愛かったな〜。」

珀め...完全に楽しんでるな...。

「おかげで昨日、俺の理性、限界だったんだけど?...責任とってくれる?」

「は...?は...くっ...!!...」

珀の唇が私の唇に、おしあてられる。

それは、噛み付くようなキス。

何度も、角度を変えて押し当てられていく。

「は...く...ん...」

「口...開けて?」

こんなことに、素直に応じてしまう、私はきっとおかしいんだろう。

そのまま、珀の舌が入ってくる。

身体中が暑くてとろけそうだった。

「ん...ちょっ...珀...!!...どこ...触って...るの...?!」

着ていた、Tシャツの裾から珀の手が入ってくる。

そのまま、手が私の胸まで来て、Tシャツがめくられていく。

「やわらか...」

「うる...さいっ...!!」

息切れしながら、必死に言う。

ーペロッ

「おいし...」

私の首筋をペロリとなめる。

「っ...!!」

「アレ〜?耳弱いのかな〜?」

「もう〜...バカァ〜...」

Tシャツが、胸の上までまくり上げられて、胸にキスされる。

首筋にも、キスされてチクリとした痛みがはしる。

その後も、こんな甘々な時間が流れたのは言うまでもない。


そして、お風呂に入った時にキスマークがたくさんついてて、びっくりしたことも...。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
時刻は丑三つ時。

妖怪が、最も活動する時間帯だ。

そんな、真夜中の今。

私は、この校舎の中を見回りをしています。

『あっ、芽依ちゃーん!何してるのー??』

と、声をかけてきたのは緑鬼。

「緑鬼...?今はね、校内に悪い妖怪が居ないか見回ってるんだよー。」

『そうなんだぁ!!ボクもお手伝いするね!』

「ホント?ありがとー!」

か、かわいいな〜...。

ニコニコと、笑顔を振りまく緑鬼は本当に可愛らしい。


「ねぇねぇ、緑鬼、最近ここら辺で出る、女の人を襲ったり、攫ったりする事件って知ってる?」

ふと、思い出して緑鬼にそう尋ねる。

『あっ、それ知ってるよ〜!他のみんなが言ってたんだけどね、それ、ボク達みたいな妖怪の仕業だよ!!』

やっぱりか...と、納得する。

それには訳があって、襲われた女の子たちには人間では付けれないような傷がつけられていたり、微かな妖気が残っていたんだ。

しばらく、校内の見回りで歩きながら緑鬼とおしゃべりする。

ービリッ

それは、突然だった。


とても強い、妖怪の気配。それを、背筋に走った気持ちの悪い悪寒が教えてくれる。

それも、とても近い場所に居る。

どこ...?!

気配をたどりながら、その妖気の元を探す。

『通りゃんせ通りゃんせ〜』

急に、聞こえてきた幼い子供の歌声に耳を疑う。

それもそのはず、今は深夜。こんな時間に、しかも、学園内に子供なんているはずがないのだから。

となると、これは妖怪ってことになる。

そして、きっと、いや間違いなく、今、ちまたを騒がせている、あの妖怪だろう。

そんなことを考えているうちにも、歌声は聞こえてきてその歌声はどんどん近づいてきてるように感じる。

ふと、後ろから手首を掴まれて振り向く。

振り向いた、私はすぐさま幼い手から離れた。

『おねぇさん。おねぇさんは、わたしと遊んでくれるの?それとも、身代わり?』

「...え?」

突如として、現れた幼い少女。
歳は、5、6歳といったところだろう。

長い黒髪は、ボサボサで着ている着物は茶色く汚れている。

『おねぇさんには、わたしが見えるんだね。わたしと遊んでくれないの?』

こちらを、見つめる少女の瞳はどこか、寂しげで悲しそう。

そんな、姿に目を奪われ立ちすくむ。

『おねぇさんも、わたしを無視するの?なら、連れてくよ。』

少し、怒ったような顔をした彼女は、私の手首をギュッとつかもうとする。

サッと身を逸らして、避けるけど、何かが飛んできて避けられず腕にかする。

...痛い。

『...っ!...なんで?わたしは1人なのにおねぇさんはお友達がいるのに!......バイバイ、おねぇさん。』

怒ったように、顔を歪めたかと思えば、フッと悲しげな表情になり最後の一言で、跡形もなく消えてしまった。
さっき、何かがかすった腕にそっと手を当ててみる。

ネットリと手に何かがつく。辺りが暗いからよく見えないが、その、何かなんて見なくたって、おおよその見当はついていた。

血だ。

とりあえず、はやく戻って手当しないと...。


でも、どうしても、頭から離れない。

あの、どこか悲しげな表情が。

私を傷つけた時も、怒ったようだったのに、傷を付けたことを悔やむような表情を浮かべていた。


なんで、彼女はあんなに悲しげな表情を浮かべたんだろう。


それに、いつもの私なら攻撃も出来たのに...私はそれをしなかった。いや、出来なかった。


その、儚げな彼女に目を奪われてしまったからなんだろうか?

寮に戻ると、時刻はもう4時過ぎだった。

珀は、寝ていたようで一安心だ。


ちなみに、なんで強い妖気が出てたのに珀が気づいてないかと言いますと...妖気が出てきた時に、珀に気づかれる前に結界をはって、妖気が周りに気づかれないようにしたんだー!

芽依さん、あの一瞬で頑張りました!!


自室に入って、電気を付けるとびっくり。

腕からは、かなり血が流れていて、着ていた服は赤く染っていた。

かすったなって時は痛かったけど、その後はあんまり痛くなかったから、大したことないと思ってたけど、大したことあったみたい。

第一、かすったどころか、結構深い傷で治るのに時間かかると困るな。

まぁ、私、傷の治りは早いし、きっと、平気さ!!

とりあえず、止血して、消毒をした。

消毒液をかけると、染みて少し痛かった。

それから、傷口にガーゼを当ててしっかりと包帯を巻いた。

夏休みで、夏で、暑いって言うのに、明日は半袖は着れないなー。

珀に、バレたら、すごーく問いただされそうだし...。


つかれたし、今日はもう寝よう。

明日のことは、明日考えればそれでいいよね?

ベットに倒れ込むようにして、私は眠ってしまった。




夏休みは、あと1週間。

これから、どうなっていくのか、誰も知らなかった。


そう、誰も、何も知らない。

でも、もう、静かに幕は上がりきっていたんだ。