「リリーさん?何で?」

驚くそぶりも見せず、レムは俺の話に真剣に耳を傾けている。俺の悩みを見透かしていたのだろうか。

「ロール国を訪れた時に、ようやく自分がリリーを好きなのだと気づいた……」

「えっ?最近じゃん。それまで気づいてなかったの?鈍感〜!」

レムの口を手で押さえ、俺は話を続けることにした。レムは俺の手を外そうともがいているが、無視しておこう。

「しかし、俺とリリーは立場が違いすぎる。俺は警察官であっちは貴族。いる場所が違いすぎるんだ!いずれリリーは同じような貴族と結婚するだろう。この恋を諦めた方がいいのかと思った。しかし……」

諦めようとするたびに、頭に浮かぶのはリリーにときめいた思い出。リリーの笑顔、リリーの言葉、リリーの体温…。その一つ一つが俺の気持ちを縛り付けて放そうとしない。無理やり解こうとしても、決して解けることがない。きっとこれは、永遠の想いのだろう。しかし……。

「リリーに、大きな秘密があると朱国に行った際にわかった」

あの入れ墨男が言った言葉。それは、まるで呪いの呪文のようだ。俺の心に恐怖を生み出していく。