「だって、俺のために弁当作ってくれたし…
それに傷つけて泣かせてしまいました。
一緒にいるとこ友だちに見られて恥ずかしくなって思ってもないこと言って…
傷つけてしまいました。
謝りもしてないんです。」
法香おばあちゃんの娘さんは樹の隣りにやってきた。
「そんなことないのよ。
ハイ、これ。
息を引き取る前にね、私に渡したの。
『私の大切な人に渡してほしい』って。
まさか、あなたみたいな学生さんだとは思わなかったけど…。
お弁当作る時、生き生きしてたの。
父が死んでから母は抜け殻のようだったのよ。
本当に亡くなってしまったかのように。
そしたらある日、手紙の便せんをいっぱい買ってきて、一生懸命書いていたわ。
あなたのおかげで母は生き返ったの。
息を吹き返してくれたのよ。
最後の最後まで…。
有り難う」