「迷惑でしょうか?」

法香おばあちゃんがしゅんとなって言った。

(か…可愛い
 俺、おかしくなっちまった?
 この人はお年寄り、お年寄り!!)

一時の気の迷い。

女っ気がない男 樹には仕方がないこと。

けど、お年寄りと言い聞かせるなんて失礼な奴である。

「どうかしら?ダメかしら?」

「え?あ、そんなことは…ないです」

断ることが可愛そうになってしまった樹。

「有り難う、うれしいわ。
 誰かのために料理するのって楽しいのよ。
 おいしいって言ってくれるかしら?とか
 この味で大丈夫かしら?とか考えながら作るのって大変だけど、楽しいの。
 私みたいなお年寄りには、ちょうどいいの。
 頭使うし、手先も使うから、ボケ防止よ」

にこやかに笑う。お年寄り法香おばあちゃん。