――法香おばあちゃんと樹との出逢い――
6月に入ってすぐのこと。
この日は雨なんか降るはずがないくらいの天気でした。
法香おばあちゃんは困っていました。
信号のない横断歩道。
車がどうしてこんなにもあるのだろうというくらい走っていた。
法香おばあちゃんは足を出すこともできない。
止まる車はない。
渡れない法香おばあちゃん…。
「うわ、早いな車。危ねぇっての。」
独り言の少年が法香おばあちゃんの隣りに立った。
「止まれよ~車…よし」
その少年は手を上げた。
車を止めて見せた。
これで渡れるようになった。
「これで渡れますよ」
こう、その少年は法香おばあちゃんにニコリと笑い、言ってくれたのだ。
「有り難うございます」