ーピッピッピッ


規則正しい機械音で目が覚めた。


ぁあ。
病院か…
戻ってこれたんだ…


俺はそんな呑気な事を考えていた。

ーガラガラ


先生「こうへいくんっ?!分かるっ?!」

「先生…」


先生は、少しホッとした顔をしていた。


先生「大丈夫かい?」

「先生…俺…」

先生「ん?」

「もう、だめなのかな…?」

先生「こうへいくん…」


先生は、ほんの少し顔を歪めた。

俺は、先生の顔で察した
もうだめなんだと。

「先生?みんなに…逢いたい」

先生「うん。分かった。呼んでくるね。」


先生は、俺に背を向けた。


「赤羽先生!」


俺は、先生を呼び止めた。
先生は、振り向いた。


「今まで、俺の為に沢山の事してくれてありがとう。俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。先生?頑張れなくて、ごめんね…」

先生にうっすら涙が滲んだ


先生「こうへいくん。君は、沢山頑張っていたじゃないか。」

「先生、ありがとう。」

先生「お礼を言うのは、私の方だよ。」

「先生?一つだけ聞いてもいい?」

先生「なんだね?」

「俺は、今までみんなを泣かせる事しか出来なかった。でも、俺が生きていた事で何か小さな事でも、みんなの為に出来たかな?」

先生「当たり前じゃないか。私はね、医療に奇跡はない。って思ってた。でも、こうへいくんを見ていたら奇跡ってあるんだって。こうへいくんの生きる力には、驚かせられたよ。医者がこんな事言ってはいけないんだろうけど、先生はこうへいくんの生きる奇跡を信じたい。」


俺は微笑んだ。


「先生、ありがとう。そして、ごめんなさい」


俺は、横になったまま頭を下げた。


先生「ん?」

「俺、もうダメみたいだから。」


赤羽先生の目から一筋の涙が流れ落ちた。


「自分の身体ってやだね。なんでも分かっちゃう。」


俺は笑ってみせた。


「先生?笑って?最期くらい、笑って見送ってよ。」


赤羽先生は、涙を拭い何も言わずふわっと笑った。


そして、みんなを呼びに行った。


これが赤羽先生との最期の会話になった。