「あい...ごめんな...」

あいはなにも言わず首を振った。

俺らは離れた。
どちらからでもなくキスをした。
そして、俺は覚悟を決めた。


「俺...ちゃんと生きてるうちに自分の口から本当の事話すわ。また泣かせちゃうかもしれないけど...」

あい「え...?」

「本当は話すつもりなかった。でも、このままじゃダメな気がするから…」

あい「わかった...。直ぐには無理かもしれないけど、ちゃんと受け止めるから...」

「ありがとう。」

俺は微笑んだ。

しばらくして、はやと達が帰ってきた。


「もうちょっとだけ、俺の話に付き合って欲しいんだけど、いい...?」

はやと「いいけど、どうした?」

「2人にも本当の事全部話そうとおもう...。俺が生きてるうちに自分の口で...。」

はやと「そっか。それが1番いいよ。」


そして、俺は話し始めた。


「あい?あの時、俺あいに告られてすっげえ嬉しかったんだ...。でも、俺こんなんだからお前のこと守れねえし、ずっと一緒に居られないから...ごめんって言った。本当は俺、あいの事めちゃくちゃ愛してる。出来る事なら付き合いたいっておもう...。でも、俺はもう長くないんだ。」

あい「え...?」

「1ヶ月が限界だと思う。」


少しの間沈黙が流れた。



みゆき「こうへい...。さっき、はやとから聞いたんだけど...なんで高校入ってから定期検診も入院も拒否してたの...?」


痛いところをつかれた…


「...お前らと一緒に居たかったから...。それと、俺その頃一回倒れたじゃん。そん時先生に言われたんだよ。もしも今ドナーが見つかったとしても、手術は出来ないって...」

みゆき・あい「っっっ!!!!」

「俺...先生に聞いたんだ。後、どのくらい生きられる?って...。先生は、発作がおきなければ長くて半年って言ってた。」

みゆき「嘘でしょ...?そんなの信じられないよ、、、」

「俺も嘘であって欲しかった。でも...それが現実なんだよ...。」

あい「なんで...」

「ごめん...」


俺は謝ることしか出来なかった。


みゆき「夏休み明けの文化祭には来るよね...?」

「ごめん...無理だと思う。」

あい「なんでよ...今半年って言ったじゃん...」


あいは、俯きながら今にも消えそうな小さな声で呟いた。

「...やっぱさ、自分の身体の事だから分かるんだよ。もう、そんなに長くは生きられないって...不思議だよな...」

みゆき「ねえ...もう本当に会えないの...?」

「うん...会えないとおもう...。」

あいはなにも言わず、静かに泣いていた。
俺は、自分の手をあいの手に重ねた。

「俺、すっげえ幸せだった。初めて心の底から死にたくねえって思った。お前らに出逢えて本当に良かったって思ってる。本当に感謝してるよ。ありがとう。」

あい「やめてよ...。そんな事言わないで...最期の別れみたいじゃん...やっぱり、そんな簡単に受け止められないよ...だって、今こうして話してるんだよ?こんなに近くにいるんだよ?なのに...なんで...?なんで...こうへいなの...」

はやと「あい、落ち着けよ。」

あい「落ち着ける訳ないでしょ?大切な人にもう会えなくなるかもしれないのに、落ち着いて居られるほど私は大人じゃない。」


あいが初めて声を荒げた。



「あい?ありがとな...。」

あい「やだよ...こうへいにもう会えないなんて、やだよ...。」

「文化祭の日...学校いくから...何があっても、あいに絶対会いに行くから。だから、もう泣くな。」

あい「え...?だって...」

「俺、あいの為に頑張って生きるから。あいも俺の為に頑張ってよ。」

あい「絶対だよ...?」

「おう。約束だ。」


俺はあいにまた守れない約束をした。
でも、その約束だけは守りたいと思った。
出来るかなんて分からない。
でも...あいの為なら何だって出来る気がしたんだ。