聞いているのかいないのか、空と呼ばれたその人は前後左右に大きく首を揺らして、今にも寝そうだ。


そんな彼に、親近感を持って近付く。



「さっきはどうも。……よろしく、ね」


「……ん……あー、ああ……」



重い瞼を持ち上げて、反応を示した彼は私のことをちゃんと覚えているらしい。


思い出したように声を漏らして、ガクリと大きく頷いた。



「あれ、天音ちゃん空と知り合いだったの?」


「うん、だった」


ホクホクとした心持ちでこくり、頷く私を余所に、苛立ちを孕んだ声がかかる。



「そんな事どうだっていいんだよ。俺が聞きたいのは、何でここに女がいるかってことだ」



“どうでもいい”って言葉にムッとする。


この人、失礼。すごく、失礼。



「ああ、それは…」


「……って、空!寄っかかんな!」


「んー…」


「いや分かってねーだろ!」