何はともあれ、どうやらこの寮にも常識人というのはしっかり存在していたらしい。


でなければ、あの場を収拾できる人はおらず、私は絶望を抱えてここでの生活を送る羽目になっていただろう。


決して冗談じゃなくて、かなり、本気で。



「いい人……っ」



誰とも知らない男の子にぐっと顔を近づけて精一杯に賞賛する。


数秒の間。


何だ、という表情で呆然としていた目前の顔が、みるみるうちに真っ赤に染まった。



「……なっ、おまっ、なななに、なに言ってんだよっ!!ばっ、バーカ!!近えんだよっ!!」



……ばか、って言われた。


私、ばか……?


バカだった、のか……。



「はあ、つかお前誰だよ。なんで女がここに……ってう、ぉわぁっ…!」