と、リビングのドアが勢いよく開け放たれる音がした。


近付いてくる気配。


目を瞬いたその瞬間に、すばしっこい何かが視界に飛び込んできた。



「ひじりぃー!!みっつーが僕のお菓子食べたぁー!!」



離れた場所から、あれだけ響く大声。


当然、近くで聞くと破壊力は抜群だ。


……耳が遠くなりそう。



聴覚の危機を著しく感じた私は、即座に耳を強く塞ぐ。


それでも一向に改善される兆しが見えない。



時既に遅く私がイカれてしまったのか。


それとも彼が常人の域を超えているからか。



……どっちだろう。



苦笑を浮かべて応対する聖の声は、常人の範疇を超えないから聞こえない。


良かった、後者だ。



憚(ハバカ)りながらも、耳を塞ぐ両手に込めた力をそっと緩める。