「ほな行こか。…っと、その前に」
ちょいちょいっと手招きしてくる光邦の側に寄ると。
「……わぷっ」
「今日も暑いからな」
光邦は被っていたキャップを私の頭に深く被せてきた。
そのまま手を引いて早足に歩き出した。
ま、前が見えない…。
慌ててキャップを控えめに持ち上げると、いつもと違う光邦の後ろ姿が窺えた。
……なんだか、いつもより少しオシャレ…?
ふんわり香る香水の匂いは、全然嫌じゃなくて、むしろ好きな香り。
白のインナー、黒のジャケット、細身のジーンズと清潔な靴。
無地の白に合わせた鎖のネックレス。
耳につけたドロップピアスが動くたびに揺れている。
いつもはもっとチャラいというか、ダボっとしたストリート系な印象だけど、今日は何か違う。
どうしたんだろう…。
そう思って、光邦の顔を見上げていると、振り返った光邦と目があった。