黙って聞いてくれたお父さんは、立ち上がってこっちに来る。
何だろう、と思っていると、ぽんぽんと、思いのほか優しく頭を撫でられた。
な、なに……?
突然の出来事に、頭を押さえて呆然としていると。
「それなら……」
頭上から聞こえる、落ち着いた声色に顔を上げる。
「その分、お前が彼らに優しくしてやれ」
見上げた先には、わずかに微笑む父の顔。
そんな優しい顔されて。
そんな言葉で励まされて。
お父さんらしい、決して長くはない、ほんの短い言葉だったけど、胸の奥がじんわり温かい。
「……うん」
私はまた、小さく頷いた。
たくさん助けてくれたみんなのために、私にできることがそんなものでいいのなら……
私はもっとずっと、みんなに優しくありたい。
今度は頼られるようになれたらいいな。
まだ何も返せてないけど、こんな私でも、みんなを助けられる日が来るかも知れない。
そう思うと、なんだか妙に誇らしい気持ちになった。