「ほんなら俺が肉焼くわ」
「俺はこっちの野菜片す」
トングをカチカチ鳴らして、新たに肉を焼き始める光邦。
網の上に残った野菜を端に避けていく楓斗。
空気が一気に和やかになった。
すすっと昴の側に寄って声をかける。
「昴、ちょっといい?」
「…?」
昴を連れて、少し離れた場所に移動する。
わざわざ場所を移したことに対して、昴は不思議そうにしている。
「あのね、昴……あの…」
話し出そうとするも、ここに来て私はまた躊躇してしまう。
今のこと、昔のこと、昴に聞いてしまっていいんだろうか。
嫌なことを思い出させるなら、止めておいたほうがいいんじゃないか。
昴と話をすると決めたのに、それ以上話すのが怖い。
不意に、楓斗の言葉を思い出す。
『受け止めてやるから』
そうだ、踏み出す一歩……
楓斗の言葉が勇気をくれる。